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平成23年地価公示の結果と東日本大震災 (2011/4)

(1)先日、平成23年地価公示が発表されたが、平成22年を通して全国的に地価下落の基調は変わらなかったものの、下落幅は縮小し、上昇や横這いの地点が増加する結果となった。全国平均では、住宅地△2.7%、商業地△3.8%であり、圏域別では、東京圏が住宅地△1.7%、商業地△2.5%、大阪圏が住宅地△2.4%、商業地△3.6%などとなっている。

ただ、公示価格は毎年1月1時点の価格を示すため、3月11日に発生した東日本大震災の被害は、福島第1原発の損傷による影響などを含め、公示価格に反映されない点に注意する必要がある。

(2)地価下落が縮小した要因の分析では、平成20年秋のリーマン・ショック以降約2年に及ぶ価格調整が進み、住宅地では値頃感の醸成、マンション販売の回復傾向が顕著で、商業地でもオフィスの賃料調整、商業地でのマンション立地、企業収益の回復、資金調達環境の好転、リート市場の回復などを挙げている。

もとより、こうした要素が大きいものの、昨年秋以降の日銀の不動産市場への積極的な介入も影響している。

ただ、昨年末から、緊縮型の政府予算が示されていたことなどから見ると、たとえ東日本大震災が発生しなかったとしても、地価下落がこのまま縮小し続けたかはいささか疑問である。

(3)ところで、東日本大震災が今後の地価にどのような影響をもたらすのであろうか。私も、確たる予測ができるわけではないが、平成7年1月に発生した阪神淡路大震災の経験を顧みたいと思う。

兵庫県淡路島沖で発生したマグニチュード7.3の大震災は、神戸市市街地を中心に明石市、姫路市、豊市などで死者約6,400人、負傷者約43,800人、損害額約9.8兆円の被害をもたらした。ライフラインのダメージは大きかったが、早朝に起こった都市直下型地震であり、建物倒壊による被害が中心で、津波はもとより原発損壊の影響はなかった点が今回の大震災とは異なる。

(4)公示価格(表1)は平成7年を挟んで、平成6年1月から平成8年1月まで2年間の大阪圏の平均的な地価変動率である。

(表1) 公示価格・大阪圏の地域別変動率
  住宅地 商業地
H6.1.1〜H7.1.1 H7.1.1〜H8.1.1 H6.1.1〜H7.1.1 H7.1.1〜H8.1.1
大阪府 △1.8% △4.4% △18.8% △18.0%
大阪市 △5.4% △5.6% △25.1% △22.3%
北大阪 △1.3% △4.3% △14.8% △15.9%
東大阪 △0.4% △3.8% △8.5% △8.9%
南大阪 △1.3% △4.2% △9.0% △11.6%
兵庫県 △2.7% △4.1% △11.3% △13.8%
神戸市 △0.9% △2.8% △11.1% △15.0%
阪神 △4.5% △5.4% △11.6% △12.5%
京都府 △1.2% △3.7% △12.2% △13.8%
京都市 △1.8% △3.9% △13.1% △13.7%
奈良県 △1.5% △5.2% △9.5% △11.5%
奈良市 △3.9% △9.7% △16.7% △20.3%

平成7年1月の阪神淡路大震災、3月の地下鉄サリン事件と国内の閉塞感は高まっていたが、住専破綻処理が漸く緒についた時期である。平成7年は平成6年よりも一段と地価下落をみたが、大震災の直接の被害地である神戸市、阪神、北大阪だけが突出して下落したわけではない。また、公示価格(表2)をみれば、東京圏でも地価下落は似たり寄ったりである。

(表2) 公示価格・東京圏の地域別変動率
  住宅地 商業地
H6.1.1〜H7.1.1 H7.1.1〜H8.1.1 H6.1.1〜H7.1.1 H7.1.1〜H8.1.1
東京都 △4.8% △5.0% △18.5% △19.0%
東京都区部 △6.8% △6.6% △20.0% △20.3%
多摩地区 △2.8% △3.4% △12.9% △14.0%
神奈川県 △1.2% △2.9% △11.1% △14.0%
横浜市 △1.1% △3.6% △12.1% △14.5%
川崎市 △1.7% △3.7% △12.5% △11.1%
埼玉県 △2.0% △5.5% △11.3% △14.4%
千葉県 △3.1% △7.8% △15.1% △19.2%

被災地では、震災後の2月には早くも復興が始まっており、様々な復興需要が起きている。このため、短期的には阪神淡路大震災が地価に与える影響が、特別に大きかったとはいえないであろう。

(5)では、神戸市を始めとする阪神地域の現在の地価は、どのようになっているのか。公示価格の地点は大震災当時と現在では大幅に変わっており、地価の定点観測ができないため、相続税最高路線価で検討してみよう。

(表3)は、阪神淡路大震災前の平成7年から5年ごとにみた主要都市の相続税最高路線価である。これによれば、平成7年段階では、京都市が東京の約48.9%で全国5位、神戸市が約48.6%で全国6位であったが、平成22年段階では、京都市が東京の約11.0%で全国6位、神戸市が東京の約10.6%で全国8位に後退した。神戸市でみれば、この間に福岡市、札幌市との都市間競争力で後塵を拝する結果となった。

(表3)
(単位:千円/u)

都市 所在地 H7.1.1 H12.1.1 H17.1.1 H22.1.1
最高
路線価
順位 最高
路線価
順位 最高
路線価
順位 最高
路線価
順位
東京都 中央区銀座5丁目 1,555 1 1,168 1 1,512 1 2,320 1
大阪 北区角田町 960 2 456 2 416 2 724 2
名古屋 中村区名駅1丁目 823 3 380 4 364 3 581 4
横浜 西区南幸1丁目 800 4 426 3 347 4 604 3
京都 下京区四条通寺町東入2丁目御旅町 760 5 255 7 173 9 256 6
神戸 中央区三宮1丁目 755 6 315 6 179 7 246 8
福岡 中央区天神2丁目 736 7 332 5 343 5 459 5
広島 中区基町 642 8 255 7 161 10 196 11
札幌 中央区北5条西3丁目 634 9 189 11 179 7 248 7
仙台 青葉区中央1丁目 558 10 216 10 137 12 205 10

(6)さて、今回の東日本大震災は被災の範囲、程度など、敗戦後最大の国難と言われる。復興資金は20〜30兆円ともいわれるが、被災者の生活と産業の復興に有効な手だてがなされることを願いたい。

私どもの職業上の関心は、東京を始めとする巨大都市の長期的な地価動向である。

原発周辺の困難な状況は別としても、関係者の努力による復興で、多くの地域社会はよみがえるはずである。もちろん、過去の延長上ではなく、災害に負けない安心・安全なまちづくりが進むことが期待される。

バブル崩壊以降、とりわけ東京への国富の移転が加速したことは、最高路線価の推移を見れば明らかである。しかし、原発の損傷と計画停電などが直接の要因であるが、東京への過度の一極集中は困難に直面したのではないか。グローバル世界と地域社会の双方から、東京が問い直される番になった。

原文の「東北関東大震災」は「東日本大震災」に変更しました。
最近の地価動向(2009/10)
−平成21年第3四半期主要地地価動向調査の結果から−

国土交通省が発表した平成21年第3四半期(7/1〜10/1)の主要都市・高度利用地150地点の地価動向調査は、前期に続いてほぼ全地区で地価が下落となったが、3ヶ月間の下落幅はさらに縮小し、過半の地点が0%超3%未満のレンジに収まった。

三大都市圏では、東京、大阪圏とも中心軸は0%超3%未満の下落であるが、輸出産業依存型の名古屋圏は下落幅を広げており、6%以上9%未満に中心軸が移って、12%以上の下落地点も再度現れた。地方都市圏でも下落幅は縮小したが、地方経済の疲弊が聞こえてくる。

この調査のように、景気の持ち直し期待、在庫や価格調整の進展で、地価下落は小康状態のようにも見えるが、ともかく、テナント需要の著しい縮小で、賃貸ビルの空室率の上昇と賃料の低下は深刻であり、新築マンション・戸建住宅の販売価格は下落が続き、中古市場も冷え込んだままである。

現下のデフレは、売買市場よりも賃貸市場に大きな打撃を与えている。こうした中で、急激な円高と国内の需要不足から、資金が安全な実物資産に向かって、一部が不動産に流れないかを注視する必要がある。東京圏では賃料の下落と期待利回りの横這いが併存する状態と思われる。

最近の地価動向(2009/03)
−平成21年第1四半期主要地地価動向調査の結果から−

国土交通省が発表した平成21年第1四半期(1/1〜4/1)の全国主要都市・高度利用地150地区の地価動向調査は、前期に引き続きほぼ全地区で下落となった。3ヶ月間の下落幅は、3%以上6%未満が67地区で最も多く、0%超3%未満が37地区、6%以上9%未満が36地点と続き、12%以上が4地点の下落となったが、全体的に下落幅はわずかに小さくなっている。

三大都市圏では、自動車関連産業の深刻な不況にあえぐ名古屋圏で落ち込みが続いており、12%以上下落した4地点はここに集中する。東京圏では3%以上の下落地区が全体の85%、大阪圏では同じく約75%を占めるが、このうち6%以上9%未満の下落地点が東京・大阪圏とも前期よりも拡大した。

地方都市圏は横ばいから9%未満の下落に収束しつつあるが、神戸市の急落が目立っている。

リーマン・ショック以降、不動産投資への資金が先細り、金融機関も信用収縮が進んでいる。新築のマンション・戸建住宅は在庫が増加して販売価格は下落、収益用不動産はテナント需要の低迷で、空室率の上昇と賃料の低下が進んでいる。投資家の期待利回りは高まり、不動産投資信託など金融資産化商品も価格下落が著しい。

景気は幾分持ち直しの傾向であるが、不動産市場にまで及ぶ気配はなく、全国的に地価下落の傾向が張り付いたままの状態が続くと見られる。

最近の地価動向(2009/01)
−平成20年第4四半期全国地価動向調査の結果から−

国土交通省が発表した、平成20年第4四半期(10/1〜1/1)の全国主要都市・高度利用地150地区の地価動向調査は、ほぼ全地区で下落となった。3ヶ月間の下落幅は、3%以上6%未満が74地区で最も多く、0%超3%未満が33地区で続く。6%以上の下落も全部で41地点あり、このうち4地点で12%以上の下落となるなど、全国に地価の下落が波及している。

三大都市圏では、自動車関連産業の依存度が高い名古屋圏で特に落ち込みがひどく、大半の地区で6%以上の下落を示し、12%以上の下落地区もほぼここに集中している。景況悪化も名古屋圏だけは例外と見られていただけに、総崩れの状況である。

東京圏では3%以上の下落地区が全体の90%弱、大阪圏では同じく約75%を占め、地方都市圏でも外資による投資ファンドなどが波及した福岡、仙台でも急落が目立っている。

世界的な金融市場の混乱で、外資を始めとした不動産投資から資金が大量に流出し、国内の金融機関も信用収縮が進んでいる。新築マンションの新規契約率は激減、テナント需要も低迷、空室率は上昇、賃料は低下し、不動産投資信託など金融資産化商品の流動性も著しく低下している。こうした要因が背景にあるが、今年になって経済情勢は一層悪化しており、地価下落がさらに深く、広範囲に広がっていく形勢である。

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